比切削抵抗と切削動力

【加工現場の基礎知識】比切削抵抗と切削動力とは?意味と活用法を解説!
切削加工の効率や設備選定を考えるうえで、重要なキーワードのひとつが**「比切削抵抗」と「切削動力」**です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、加工条件の見直しや機械能力の確認には欠かせない指標です。
この記事では、それぞれの意味と関係、現場での活用法を分かりやすく解説します。
比切削抵抗とは?
**比切削抵抗(specific cutting force)**とは、単位面積あたりに必要な切削力を表したものです。記号では一般に kc で表され、次のように定義されます。
【定義式】
kc = Fc / A
- kc:比切削抵抗(N/mm²)
- Fc:切削力(N)
- A:切削断面積(mm²)=切込み深さ(ap)×送り量(f)
つまり、「材料を1mm²削るのにどれだけの力が必要か」を表す値です。
【特徴】
- 材料の硬さや性質によって値が大きく異なる。
- 高炭素鋼や焼入れ鋼などの硬い材料ではkcが高くなる。
- 一般的に、加工しにくい材料=比切削抵抗が大きい。
切削動力とは?
**切削動力(cutting power)**は、切削に必要なエネルギーの大きさを示します。モーターや機械の能力を評価する際に重要な指標です。
【定義式】
Pc = (Fc × V) / 60,000
- Pc:切削動力(kW)
- Fc:主分力(N)
- V:切削速度(m/min)
もしくは、比切削抵抗を使って簡略化した計算も可能です:
Pc = (kc × A × V) / 60,000
【注意点】
- 実際には機械の効率や摩擦損失なども加味する必要があるため、「主軸モーター容量≒切削動力」ではない。
- 工具が摩耗したり、条件が悪いと実際の動力は上昇する。
加工現場での活用例
1.
機械選定
加工したい材料や切削条件から必要な切削動力を計算することで、使用する工作機械やモーター容量が足りているか判断できます。
2.
加工条件の最適化
比切削抵抗を材料ごとに把握しておけば、最小限の負荷で効率的な加工条件を設定できます。
3.
工具摩耗やトラブルの兆候検知
切削動力が急に増加した場合、工具の摩耗や欠損、材料の硬化などの異常を早期に察知できます。
まとめ
用語 | 内容 | 単位 | 主な活用ポイント |
比切削抵抗(kc) | 材料1mm²あたりに必要な力 | N/mm² | 材料の削りやすさ比較,条件設計 |
切削動力(Pc) | 実際のエネルギー消費量 | kW | 機械選定,設備設計,トラブル検知 |
「比切削抵抗」と「切削動力」を理解すれば、無駄なパワー消費を抑えて効率的な加工ができるようになります。加工現場のトラブルやコスト削減にも大きく貢献する考え方なので、ぜひ活用してみてください!