焼入性
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【熱処理の基本】焼入性とは?焼入れの“効き具合”を左右する重要な性質を解説!
「この部品、焼入れしたけど思ったほど硬くならない…」
「表面は硬いけど、中まで硬くなっていない?」
そんなときに注目すべきキーワードが「焼入性(やきいれせい)」です。
焼入性とは、焼入れ処理によってどれくらい深く・均一に硬化できるかという金属の性質。
同じ処理条件でも、材質によって“焼入れの効き方”は大きく異なります。
この記事では、焼入性の基本と、材質選定や設計時のポイントをわかりやすく解説します。
焼入性とは?
焼入性とは、**鋼を焼入れしたときに、どのくらい深さまで硬化するか(マルテンサイト化するか)**の性質です。
- 焼入れ硬化が深くまで届く → 焼入性が高い
- 表面だけ硬化、中心部は未硬化 → 焼入性が低い
この焼入性は、「焼入れできるかどうか」ではなく、「どれくらいの深さまで安定して焼入れできるか」という視点で評価されます。
焼入性に影響を与える主な要因
1.
化学成分(合金元素)
- C(炭素):硬さに直結。炭素量が多いほどマルテンサイト化しやすい
- Cr、Mo、Mn、Ni などの合金元素:焼入性を高め、硬化の深さが増す
→ 高炭素+合金鋼ほど、焼入性が高く、深くまで硬化する
2.
冷却速度(焼入れ媒介)
- 水冷(急冷):早く冷やすので焼入れが深くまで届く
- 油冷・空冷:ゆるやかに冷やすため、表面焼入れに向く
→ 同じ鋼材でも、冷却条件で焼入性の「実効深さ」は変わる
3.
形状・断面厚さ
- 肉厚が厚い部品は、内部まで冷えにくく、焼入性が低下しがち
- 薄物はすばやく冷却され、全面焼入れが可能
焼入性の代表的な評価法:
ジョミニー試験
焼入性の評価として広く使われているのが「ジョミニー焼入れ試験」です。
● 試験概要:
- 丸棒状の試験片をオーステナイト化温度まで加熱
- 端面に水を吹きつけて片側だけを急冷
- 長さ方向に沿って硬さを測定 → 深さによる硬化の変化を見る
→ 焼入性の高い鋼ほど、遠くまで硬度が高く保たれる
設計・加工時の注意点
- 深く焼きたい部品は焼入性の高い鋼種を選ぶ(中~高炭素・合金鋼)
- 表面だけ硬くしたい場合は、表面焼入れ(高周波焼入れなど)や浸炭焼入れが有効
- 冷却方法・加工精度・歪み制御も、焼入れの“効き方”に大きく影響
まとめ:焼入性を知れば、焼入れはもっと成功する!
焼入れは単なる「加熱と冷却」ではなく、
- どの材質を使うか
- どのくらい硬化深さが必要か
- どんな冷却手段を使うか
といった設計判断によって、性能も不具合も大きく変わります。
「表面だけでいいのか?」「内部まで硬さが必要か?」――
焼入性を正しく理解して選ぶことで、より高精度で長寿命な製品づくりが可能になります!