切削加工における実削のねらいと送りの考え方
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切削加工は、工作物を目標寸法・精度に仕上げるための重要な工程です。その中でも「実削(じっさく)」とは、荒加工や下加工の後に行う最終的な仕上げ加工を指し、寸法精度・面粗さ・幾何公差などを狙い通りに仕上げる重要な段階です。本記事では、実削のねらいと送り(feed)の設定について解説します。
1. 実削とは何か?
実削とは、加工の最終段階であり、目的とする形状・寸法・表面性状に極力近づける工程です。以下のような特徴があります。
- 寸法精度の確保(IT6~IT8など)
- 良好な表面粗さ(Ra0.8~Ra3.2程度)
- 幾何公差(真円度、平行度など)を満たす
- 工具や機械の剛性を生かした安定加工
そのため、実削では切削条件を慎重に設定する必要があります。
2. 実削のねらい
実削の目的は単なる「仕上げ」ではなく、製品仕様の最終保証に直結します。具体的なねらいは以下のとおりです:
ねらい項目 | 内容 |
寸法のねらい | ±0.01~±0.05mm程度の高精度な寸法達成 |
表面のねらい | 鏡面に近い平滑な面(Ra1.6以下) |
幾何形状の狙い | 真円度、直角度、同軸度などの確保 |
応力・変形の抑制 | 残留応力や切削熱による反りを抑える |
3. 実削における送りの役割
送り(feed)は、工具が1回転または1往復する間に進む量(mm/rev, mm/minなど)を表し、加工品質と加工時間の両方に直結する重要なパラメータです。
送りが小さいと…
- 面粗さは向上しやすい(細かく削る)
- 加工時間が長くなる
- 刃先に負担が集中し、摩耗が早まる可能性あり
送りが大きいと…
- 面粗さが悪化しやすい
- 加工能率は向上
- 工具・機械の剛性次第ではびびりや仕上げ不良が出る
4. 実削時の送り設定の目安
実削における送りは、材料・工具・加工方式・求める面粗さに応じて設定されます。以下は一例です。
材料 | 工具 | 面粗さ目標 (Ra) | 推奨送り (mm/rev) |
炭素鋼(S45C) | 超硬バイト | 1.6 | 0.05〜0.15 |
アルミニウム | 超硬バイト | 0.8 | 0.03〜0.10 |
ステンレス(SUS304) | 超硬 or セラミック | 3.2 | 0.05〜0.12 |
焼入れ鋼(HRC55) | CBN工具 | 0.8 | 0.01〜0.05 |
※ 仕上げ加工では、送り量が小さいほど面粗さは良くなる傾向がありますが、摩耗や加工時間も加味する必要があります。
5. 実削送り設定のポイント
- 面粗さから逆算して送り量を設定する(経験値や加工マップを参考に)
- 工具のチップ形状と逃げ角に適した送りを選ぶ
- 切込み(ap)とのバランスを取る
- 加工物の剛性・形状変化の影響を考慮する
- 切削油・冷却方式が適切であるか確認する
まとめ
実削加工は、製品の品質を決定づける重要な最終加工工程です。その中でも送りの設定は「面粗さ」「精度」「工具寿命」など多くの性能に影響を与えます。適正な送り量は、素材や加工条件を踏まえた経験とデータに基づく判断が重要です。加工現場での実績や加工試験を活用しながら、より高精度・高効率な仕上げ加工を目指しましょう。