切削加工における回転数(切削速度)の基本と考え方

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切削加工において、「回転数」や「切削速度」は加工効率・工具寿命・仕上がり精度に大きな影響を与える重要なパラメータです。特に実削や高精度加工では、回転数の最適化が製品品質に直結します。本記事では、回転数(主軸回転数)と切削速度(Vc)の違いや求め方、適正条件の考え方についてわかりやすく解説します。


1. 回転数と切削速度の違いとは?

項目内容単位
回転数主軸が一分間に回る回転rpm(回転/分)
切削速度刃先が材料表面を動く速さm/min(メートル/分)


**回転数(N)**は機械のスピンドルが何回転しているかを示す値で、**切削速度(Vc)**は工具が材料表面をどのくらいの速さで削っているかを示します。

2. 回転数の求め方

回転数(N)は、以下の計算式で求められます:

N = 1000 ×Vc/π×D

  • N:回転数(rpm)
  • Vc:切削速度(m/min)
  • D:加工径(mm)
  • π:円周率(3.14)


3. 切削速度の目安(材料別)

材料切削速度の目安m/min備考
炭素鋼(S45C)80〜120汎用旋盤~CNC機向け
アルミニウム200〜600高速回転でも安定
ステンレス鋼(SUS304)40〜80低速で摩耗抑制
焼入れ鋼(HRC55)80〜150CBN工具使用時
鋳鉄(FC250)100〜200チップ摩耗に注意

※ 工具材質(超硬、ハイス、セラミックなど)や切削条件(乾式・湿式)によっても大きく変わります。

4. 回転数設定のポイント

① 材料と工具の組み合わせを考慮

例:アルミには高速が有効だが、ステンレスでは低速が有利

② 工具寿命とのバランスを取る

高すぎるVcは工具摩耗を早め、低すぎるVcは加工時間が長くなる

③ 切削熱の影響を抑える

回転数が高いほど切削熱が増加。特に精密仕上げでは注意

④ 機械の能力を確認する

最大回転数(上限rpm)や最適トルク域を確認する

5. 回転数の調整に使うGコード(NCプログラム)

CNC機では、主軸回転数の設定は G97 / G96 コマンドで制御します。

  • G97:固定回転数制御(S = 回転数)
     例)G97 S1200 → 主軸を1200rpmに設定
  • G96:切削速度一定制御(S = Vc)
     例)G96 S150 → 常に150m/minで切削(径変化に応じてrpm自動調整)

G96は外径が変化する加工(旋削など)で便利ですが、加工初期の回転数急増には注意が必要です。

まとめ

回転数(rpm)と切削速度(m/min)は、加工品質と工具寿命、加工能率を左右する最重要パラメータです。切削条件は「材料」「工具」「加工径」などのバランスを見ながら決定し、適正な回転数に調整することで安定した切削が実現します。特にNC加工ではGコードの理解も重要ですので、実践に役立つようにパラメータ設計の経験を積み重ねていきましょう。

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