硬さと引張強さの関係とは?──金属材料の“強さ”を読み解く基本知識
カテゴリーblog

機械部品や構造材の性能を評価する際、よく出てくるのが「硬さ」と「引張強さ」という2つの指標です。どちらも「材料の強さ」に関係していますが、測定方法も意味合いも異なります。
今回は、硬さと引張強さの関係を整理しながら、それぞれが示す材料特性と実務での使い方について解説します。
硬さとは?
硬さとは、材料表面がへこみにくい・傷つきにくい性質を示します。
次のような圧子(押し込み具)を使って試験体に力を加え、へこみの大きさから数値化します。
引張強さとは?
引張強さとは、**材料を引っ張ったときに破断するまでに耐える最大の応力(MPa)**のことです。
引張試験では、棒状の試験片を引き伸ばし、破断までの荷重を記録して以下のような特性を導き出します。
- 引張強さ(Tensile Strength, TS)
- 降伏点(Yield Point)
- 伸び(Elongation)
材料の構造的強度・安全設計・破壊限界などを評価するための基本的な指標です。
硬さと引張強さの関係
実際には、ある程度の相関関係があります。特に炭素鋼や合金鋼では、次のような経験式が知られています。
引張強さMPa〜3.5 ×ブリネル硬さHB
このように、硬さからおおよその引張強さを推定できる場合があります。
例:ブリネル硬さ200の場合
TS 〜3.5 ×200 = 700 MPa
相関の注意点
- 材料の種類(鋼、アルミ、銅、チタンなど)によって係数は異なる
- 熱処理や加工硬化などで表面と内部の性質が異なる場合がある
- 高硬度材料では破壊靱性や延性とのトレードオフがある
つまり、「硬い=強い」とは限らず、用途に応じて硬さと引張強さを分けて考える必要があります。
まとめ:硬さは“触れる強さ”、引張強さは“支える強さ”
硬さは表面の傷つきにくさ、引張強さは構造の壊れにくさを示す指標です。
両者は関連しつつも異なる性質であり、材料設計や製品評価では目的に応じて使い分けることが重要です。
硬さ試験は簡易的、引張試験は本格的な性能評価。両者を理解することで、材料の“本当の強さ”が見えてきます。