剛性とコンプライアンスとは?──変形に対する“抵抗”と“柔軟さ”を読み解く力学の基本
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構造設計や機械加工の世界では、必ず登場する「剛性」と「コンプライアンス」という概念。
どちらも“物体の変形しやすさ”に関係する性質ですが、表裏一体のようでいて、意味は正反対です。
今回は、これら2つの力学的性質の違い・関係・使い分けについて、図解と共にわかりやすく解説します。
剛性(Stiffness)とは?
剛性とは、**「外力に対して、どれだけ変形に抵抗するか」**という性質で、以下のように定義されます:
k = F/d
- F:加えた力(N)
- :変形量(mm)
つまり、大きな力をかけてもあまり変形しない物体ほど剛性が高いということです。
機械設計においては、「たわまない構造」「びびらない工具」が高剛性であることを意味します。
コンプライアンス(Compliance)とは?
コンプライアンスは、剛性の逆数として定義されます:
C = d/F=1/k
こちらは**「力に対する変形のしやすさ」を表し、
柔らかく、よく変形する構造や材質はコンプライアンスが高い**と言えます。
剛性とコンプライアンスの関係
剛性とコンプライアンスは数学的に完全に反対の意味を持ちます。
- 高剛性 → 低コンプライアンス
- 低剛性 → 高コンプライアンス
注意:剛性は材料だけでなく「形状・構造」に依存する
剛性は材料のヤング率(弾性係数)にも関係しますが、実際には構造の断面形状・長さ・結合部の設計も大きく影響します。
同じ素材でも「細長い梁」は「厚みのある柱」よりも剛性が小さくなります。
まとめ:「たわまない vs しなる」は設計思想の違い
剛性とコンプライアンスは、一方が“優れている”わけではなく、用途に応じた設計哲学の違いです。
- 精度と安定性が求められる→高剛性
- 柔軟な対応や安全性が求められる→高コンプライアンス
設計者やエンジニアにとって、両者を理解し、適切にバランスを取ることこそが機械性能を最大化する鍵となります。