工具損傷と切削温度の関係とは?──見えない“熱”が工具寿命を縮める理由

カテゴリーblog
この投稿をシェア twitter facebook line

切削加工では、工具と被削材が激しく接触し、摩擦とせん断によって高温が発生します。

この「切削温度」が上昇しすぎると、工具の摩耗や破損を加速させる重大な原因となります。

この記事では、工具損傷と切削温度の関係性、損傷の種類、熱対策の実務例について、図とともに解説します。

なぜ切削温度が上がるのか?

切削加工では、以下の3つのメカニズムによって熱が発生します:

  1. せん断帯の変形エネルギー(被削材内部)
  2. チップと工具の摩擦熱(すくい面)
  3. 工具とワークの接触熱(逃げ面)

これらにより、切削点で数百~1000℃以上の高温になることがあります。

とくに硬い材料や高速度切削では、切削温度の管理が極めて重要です。

高温がもたらす主な工具損傷

① クレータ摩耗(すくい面)

  • 高温下でチップと工具表面が摩耗
  • 超硬工具でも1000℃以上で顕著に進行

② フランク摩耗(逃げ面)

  • 工具と加工面の摩擦による摩耗
  • 工具寿命の代表的な終端判定指標

③ 熱疲労亀裂・チッピング

  • 高温と冷却の繰り返しによる熱衝撃で表面に亀裂
  • 特に断続切削・湿式加工に多い

④ 酸化・拡散摩耗

  • 高温での化学反応により工具成分が溶出・拡散
  • セラミックやコーティング工具で要注意

対策:切削温度を抑えるには?

✅ 切削条件の最適化

  • 高速化は控えめに、適切な切込み・送りを選定
  • 難削材では無理な連続切削を避ける

✅ クーラントの工夫

  • スルースピンドルによるピンポイント冷却
  • ミスト・MQL(微量給油)で表面温度の安定化

✅ 工具の選定

  • 耐熱性の高いTiAlNコート・セラミック工具などを使用
  • コーティングの剥離に注意して定期交換

まとめ:工具寿命は「熱との戦い」

切削加工において、工具の損傷原因の多くは**摩耗よりも“熱”**に起因しています。

高温は摩耗を加速させ、寿命を短縮させ、加工品質を損なう最大の敵。

「切削温度を制する者が、加工精度と工具寿命を制する」──

それほど、熱の管理は現場の重要テーマです。

お問合わせはこちら