インサートチップの管理術──摩耗記録と交換基準を押さえよう
カテゴリーblog

はじめに
切削工具の寿命管理は、生産性とコストの両面において重要なテーマです。中でも**インサートチップ(チップ交換式工具)**は、摩耗管理を適切に行うことで無駄なく使い切ることが可能です。本記事では、現場で役立つ摩耗の記録方法と交換基準の考え方について解説します。
1. なぜチップの管理が重要なのか?
- 過早交換 → コスト増
- 遅すぎる交換 → 品質不良や工具破損
- 適切な管理 → 工具寿命の最大化と安定した加工品質
2. 摩耗の記録方法
✔ 摩耗記録の基本項目
- 使用時間/加工数量
- 加工材質と条件(速度・送り・切り込み)
- 摩耗状況(フランク摩耗長など)
- 交換日/担当者メモ
✔ 実用例:摩耗記録表(簡易フォーマット)
日付 | チップ品番 | 加工素材 | 使用時間 | 摩擦状態 | 交換理由 | 備考 |
6/9 | CNMG120408 | S45C | 60分 | フランク摩擦0.25mm | 寸法制度不良 | クーラント不足気味 |
✔ 写真や顕微鏡画像の添付
摩耗状況を画像で記録することで、トレンドの可視化が可能になります。
3. 交換の判断基準
● 一般的な摩耗限界の目安
摩擦の種類 | 限界目安 | 備考 |
フランク摩擦 | 0.3mm程度 | 寸法不良やバリの発生リスク上昇 |
クレータ摩擦 | 幅0.04mm以上 | 刃先強度低下によるチッピングの危険 |
チッピング | 刃欠け発生時 | 即交換が望ましい |
熱割れ | ひび割れが確認された時点 | 応力集中による破損リスク大 |
● 寸法・表面粗さなどの
加工結果
も重要な判断材料です。
4. チップ交換タイミングのルール化
- 「累積60分稼働またはフランク摩耗0.25mmで交換」などのルール設定
- 作業者全員が同じ判断基準で対応できるようにする
- 加工ごとの傾向把握で、先回り交換が可能に
まとめ
インサートチップは消耗品であると同時に、加工品質と生産性を支える重要部品です。摩耗状態を見える化し、明確な交換基準を設けることで、加工現場の安定とコスト低減を実現しましょう。