超硬合金M20の特性と使い方|汎用旋削加工に最適な万能グレードを解説
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超硬合金M20は、ISO材種区分における「M種」に属するグレードの一つで、ステンレス鋼や難削材の汎用加工に広く使用されている代表的なチップ材質です。被削材の特性に合わせて「硬さ」と「靱性」のバランスを最適化した合金であり、さまざまな旋削加工で安定した性能を発揮します。
1. M20グレードとは
M種は、主にオーステナイト系・フェライト系・マルテンサイト系ステンレス鋼を対象とした切削用途に対応する超硬材です。なかでもM20は、
- 中硬度
- 中等の靱性
- 広範な用途適正
というバランスに優れた特性をもち、連続・断続切削の両方に対応可能です。
2. M20の主な特性
- 優れた耐摩耗性:加工硬化しやすいステンレス鋼にも対応可能
- 適度な靱性:軽度の断続切削でもチッピングを抑制
- コーティング対応が豊富:TiAlNやAlCrNなど、熱や酸化に強いコートとの組み合わせで性能が向上
- 加工安定性が高い:条件変動にも対応しやすく、機械加工の信頼性を高める
3. 代表的な用途
- SUS304、SUS316などのステンレス鋼旋削加工
- SUH系耐熱鋼の仕上げおよび軽切削
- 難削材の中切削領域(送り量0.1〜0.3 mm/rev程度)
4. 推奨切削条件(例:SUS304加工時)
- 切削速度: 80–120 m/min(コーティング付き)
- 送り量: 0.1–0.25 mm/rev
- 切込み深さ: 1–3 mm
- 冷却方法: 水溶性クーラント or MQL(加工熱の集中を避けるため)
5. 注意点と選定のポイント
- 深切削・重断続切削では、M20より靱性寄りのM30グレードを選定した方がよい
- 表面粗さが求められる仕上げ加工では、刃先ホーニング形状にも配慮が必要
- 使用中の摩耗状態をフランク摩耗・ノッチ摩耗で管理することで、最適な交換タイミングを把握可能
■ まとめ
M20は、汎用性の高い優秀な超硬合金グレードとして、多くの現場で信頼されています。ステンレス鋼や耐熱鋼の加工で迷ったとき、まずM20を選択肢に入れることで、安定した加工品質と工具寿命が期待できます。