なぜ半導体市場はここまで拡大したのか?──“機能飢餓”と“スケーリング”が導いた成長

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世界の半導体市場は、2020年代に入り過去最大規模の拡大を遂げ、2023年には約5700億ドル(約80兆円)規模に達しました。その背景には、社会全体における“半導体依存”の高まりと、それを支えてきた技術革新があります。特にキーワードとなるのが「機能飢餓」と「スケーリング」です。

◆ 機能飢餓とは?

「機能飢餓(function hunger)」とは、ユーザーや市場が、より多くの機能・性能・利便性を求める状態を指します。スマートフォンのカメラ画質向上、クラウドAIの演算性能、車載制御の多様化など、あらゆる分野で「もっとできることを増やしたい」というニーズが生まれています。

この欲求に応える手段として、より高度な演算・記憶・制御を可能にする高性能な半導体の需要が爆発的に増加しました。まさに、半導体が情報社会の“燃料”として供給される時代です。

◆ スケーリングとは?

「スケーリング(scaling)」とは、トランジスタを小型化し、集積密度を高めることで、1チップあたりの処理能力を向上させる技術革新のことです。ムーアの法則に象徴されるこの進化は、以下のような恩恵をもたらしました:

  • 性能向上:同じサイズでもより高速で複雑な処理が可能に
  • 低消費電力化:エネルギー効率の向上
  • コスト削減:単位機能あたりのコストが下がる

スケーリング技術によって、機能飢餓を満たす高性能半導体が、より安く・より多く市場に投入されるサイクルが生まれ、半導体市場は雪だるま式に拡大していきました。

◆ 拡大市場の今後の焦点

今日の半導体は、かつてのPCやスマホだけでなく、自動車、データセンター、スマート家電、さらにはAIチップや量子コンピュータへと応用範囲を拡大しています。今後の市場成長を支えるキーワードは以下のとおりです:

  • 先端ノードへの対応(2nm, 3nm)
  • 新材料(SiC, GaN)や3D実装技術
  • 高信頼性・低消費電力の要求
  • 生成AI・自動運転・スマートシティ向けアーキテクチャの進化

“機能飢餓”と“スケーリング”の連鎖がもたらした半導体市場の拡大は、今後も社会の進化とともに止まることなく加速していくと考えられています。

このブログを書いた人

長谷川 一英

有限会社 長谷川加⼯所

代表取締役

長谷川 一英

切削加⼯の長谷川加⼯所について

切削加⼯で難しい産業部品を柔軟に製作。
アルミ・スレンレス・鉄 etc。
試作・⼩ロット量産。
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