ムーアの法則を超えて──“More Moore”と“More than Moore”が描く半導体の未来

半導体技術は、これまで「微細化」という1本の道を突き進むことで、性能・集積度・コスト効率のすべてを飛躍的に向上させてきました。これは「ムーアの法則」と呼ばれ、長年、業界の進化をけん引する基盤となってきました。
しかし21世紀に入り、物理限界や製造コストの急騰、用途多様化により、新たな進化の方向が模索されています。そこで登場したのが、「More Moore」と「More than Moore」という2つの考え方です。
◆ More Moore(さらなる微細化)とは?
More Mooreとは、これまで通りトランジスタをより小さく・高密度に集積する方向性のことを指します。具体的には:
- 5nm → 3nm → 2nmプロセスへの微細化
- Gate-All-Around(GAA)型トランジスタ構造の採用
- EUV(極端紫外線)リソグラフィーによる精密加工
この路線は、高性能コンピューティングやスマートフォン向けSoCといった領域で必須とされており、TSMC、Samsung、Intelといった大手ファウンドリーが巨額の投資を続けています。
◆ More than Moore(異種技術の融合)とは?
一方で、微細化だけではカバーできない用途やニーズに対しては、「More than Moore」の発想が重要視されています。これは多機能化・3次元積層化・異種材料融合などにより性能を高めるアプローチです。
代表的な技術例:
- 3D-IC・チップレット設計による積層集積
- MEMS(マイクロマシン)やRF(無線)との融合
- モノリシックフォトニクス(光と電子の一体化)
- 異種材料(SiC, GaN, InP)の利用
More than Mooreは、自動車・センサ・IoT・医療機器・AIエッジなど、広範な応用分野に対応する鍵となっています。
◆ 共存して進化する2つの道
半導体産業は現在、「More Mooreで突き詰める性能」と「More than Mooreで広げる用途」の両輪で進化しています。この二軸戦略により、次のような展望が描かれています:
- 性能:HPCや生成AIに向けた超高速演算処理
- 機能:センシング・通信・電力変換を統合するスマートチップ
- 小型化:スペース効率を追求する3Dパッケージング
- 高信頼性:車載・産業機器向けの堅牢設計
今後の半導体の革新は、単なる“縮小”ではなく、“積み重ねる”“つなぐ”という視点を取り入れることで、まったく新しい可能性を切り拓いていくでしょう。
このブログを書いた人

有限会社 長谷川加⼯所
代表取締役
長谷川 一英
HASEGAWA KAZUHIDE
切削加⼯の長谷川加⼯所について
切削加⼯で難しい産業部品を柔軟に製作。
アルミ・スレンレス・鉄 etc。
試作・⼩ロット量産。
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