バックラッシュ補正とは?──“あそび”を数値で制御する精密加工の基本技術

カテゴリーblog
この投稿をシェア twitter facebook line

CNC工作機械やサーボ制御装置で高精度な位置決めを行う際に問題となるのが「バックラッシュ(Backlash)」。

これは、ねじ機構やギヤに生じる“あそび”=隙間であり、動作方向を切り替えるたびに微妙なズレを生じさせる要因です。

この誤差を補正して、正確な位置決め・輪郭加工を実現するのが**「バックラッシュ補正」**です。

バックラッシュとは?

バックラッシュとは、ねじやギヤなどの機械要素の“隙間”によって発生する、逆方向移動時の遅れ量を指します。

🔄 例:ボールねじの場合

  • 正方向に回転中:軸が順調に移動
  • 回転を逆方向に切り替えると…
     → 最初の数μm〜数十μmはシャフトが空回りして移動しない

▶ この**“遊びの量”がバックラッシュであり、微細加工や輪郭加工において精度の低下や寸法ズレ**の原因になります。

バックラッシュ補正のしくみ

数値制御(NC装置)では、あらかじめ各軸のバックラッシュ量を測定しておき、

移動方向が切り替わったときに「補正量」を自動加算することでズレを打ち消します。

仕組みの簡略図:

位置指令(例:X+10mm → X-10mm)
 ↓
方向切り替え検出(+から−へ)
 ↓
X軸に 例:0.02mmの補正値を上乗せ
 ↓
実際の軸移動:X = -10.02mmへ補正

実際の補正方法

✅ 測定と設定の手順:

  1. 正・逆方向に同じ距離を移動させる
  2. 指令位置と実測値のズレを比較
  3. 誤差(バックラッシュ量)をNC装置に登録
  4. 以後、自動補正が有効化される

※ 多くのCNC装置にはバックラッシュ補正テーブル機能があり、軸ごと・位置ごとに補正が可能です。

バックラッシュ補正の限界と注意点

  • 機械的な摩耗が進むと補正値が変化
  • あくまで「誤差補償」であり、根本解決ではない
  • 正確な測定と定期的な補正値更新が重要

▶ 長期的には、「**高剛性ボールねじ採用」「リニアエンコーダ追加」**など、構造的対策も必要です。

まとめ:バックラッシュ補正は“微細な誤差に勝つ”ための仕組み

バックラッシュはミクロン単位の加工精度を求める中で見逃せない機械的弱点です。

しかし、**制御技術による補正=“ソフトでハードを補う”**ことで、その影響を限りなくゼロに近づけることが可能です。

寸法ズレに悩んだら、まずは「バックラッシュ補正値」を見直す──

それが加工精度を取り戻す第一歩かもしれません。

お問合わせはこちら