腐食環境別の鋼材選定

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【腐食から守る設計力】腐食環境別の鋼材選定ガイド ~失敗しない耐食鋼の選び方~

金属製品や構造物にとって、腐食(サビ)は最も厄介な劣化要因のひとつです。

「見た目が悪くなる」だけでなく、強度の低下・事故・メンテナンスコストの増加にも直結します。

だからこそ、腐食対策は設計段階の材料選定がカギになります。

今回は、腐食環境に応じた鋼材の選び方をわかりやすく解説します。

腐食の基本メカニズム

鉄は空気中や水分中の**酸素と反応して酸化鉄(サビ)**になります。

腐食速度は、環境の「湿度」「塩分」「化学物質」によって大きく左右されます。

腐食環境の種類と鋼材選定のポイント

1. **屋内・乾燥環境(低腐食)】

特徴:

  • 湿気や水分が少ない
  • 酸性・塩分もほとんどない

推奨鋼材:

  • 一般構造用鋼材(SS400)
  • 塗装付きの炭素鋼
  • SUS430(フェライト系ステンレス):コスト重視の軽防錆

用途例:

  • 建物内の構造部材、機械フレーム、ラックなど

2. 

屋外・都市部環境(中腐食)

特徴:

  • 雨ざらし、結露、排気ガスによる酸性雨の影響あり

推奨鋼材:

  • SUS304(オーステナイト系ステンレス)
  • 耐候性鋼(COR-TEN鋼):表面に安定した保護サビを形成
  • 溶融亜鉛メッキ鋼材(ZAMなど)

用途例:

  • 屋外設備、ガードレール、外装材、標識柱

3. 

海沿い・塩害地域(高腐食)

特徴:

  • 海風による塩分(NaCl)に常時さらされる
  • ステンレスでも「孔食(ピンホール状の腐食)」が発生しやすい

推奨鋼材:

  • SUS316(モリブデン入りステンレス)
  • 二相系ステンレス(SUS329J4Lなど)
  • チタンやアルミ合金(軽量&高耐食)※用途による

用途例:

  • 海沿いの橋梁・建築物、港湾施設、海水配管、マリン設備

4. 

化学プラント・高腐食ガス環境

特徴:

  • 酸・アルカリ・塩素ガスなど、腐食性物質が多い
  • 高温・高圧の条件も重なることがある

推奨鋼材:

  • SUS316L(低炭素ステンレス)
  • ニッケル基合金(ハステロイ、インコネル)
  • フッ素樹脂ライニング鋼、ゴムライニング鋼

用途例:

  • 薬品タンク、配管、熱交換器、化学反応槽

まとめ:腐食対策は「環境を読む」ことから始まる

金属の耐久性は、材料そのものの強度だけでなく、腐食への対策が大きく影響します。

そしてその対策は、「どんな環境に置かれるのか」を正しく見極めて、適切な鋼材を選ぶことが基本です。

設計時に適切な材料を選んでおくことで、

  • 製品の長寿命化
  • メンテナンスコストの削減
  • 安全性の向上
    が期待できます。

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