はめあい公差とは?──“組み合わせ”を設計するための寸法のルール
カテゴリーblog

機械設計や金属加工において、シャフトと穴のような部品同士を組み合わせるときに不可欠なのが「はめあい公差(fit tolerance)」です。
単なる寸法の一致ではなく、意図したすきま・締まり具合を実現するための設計手法です。
この記事では、はめあい公差の種類・記号・設計の考え方について、図と事例を交えて解説します。
はめあい公差とは?
はめあい公差とは、軸(外径部品)と穴(内径部品)を組み合わせたときのすきま・締まりの状態を決めるための寸法許容の範囲です。
この公差によって、部品同士の動きや固定状態、組み立てやすさ、機能性が左右されます。
はめあいの3分類
分類 | 状態 | 例 |
すきまばめ(クリアランス) | 軸が穴より小さく、ゆとりあり | モーター軸とプーリー |
しまりばめ(インターフェア) | 軸が穴より大きく、圧入状態 | ベアリング外輪の圧入 |
中間ばめ(トランジション) | 状況によってすきま or しまり | 精密部品や位置決めピンなど |
はめあいの記号と読み方(JIS方式)
穴基準方式(一般的):
- 穴寸法は基準とし、軸を変化させる方式
- 記号例:
- H7/g6:標準的なすきまばめ
- H7/p6:軽いしまりばめ
- H7/k6:中間ばめ
記号の意味:
- H7 → 穴の許容範囲
- g6、k6、p6など → 軸の許容範囲
(アルファベットが下がるほど軸が小さく、上がるほど大きい)
公差の単位と範囲
JIS B 0401-1 に基づく「IT等級(IT5〜IT14)」で精度レベルを指定
(数字が小さいほど高精度)
例:
- H7:標準公差(中精度)
- H6:H7よりも厳しい公差(高精度)
- H9:H7よりも緩い(粗加工)
はめあい公差を設定する際の注意点
- 機能要件を明確にする(回転?固定?すきま必要?)
- 加工コストとのバランスを取る(高精度ほど高コスト)
- 材料の熱膨張を考慮(締まりすぎると組立不能になることも)
まとめ:はめあいは“機能をつなぐ設計言語”
はめあいは、単なる寸法合わせではなく、「動く」「止まる」「つながる」といった機械の基本動作を成立させるための寸法上の設計戦略です。
精度と機能のバランスを考慮しながら、設計図面に“目的に応じた公差”を描くことが、ものづくりの基礎になります。