刃先形状と切削抵抗の関係
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切削加工の刃先形状と切削抵抗の関係とは?~加工の質を左右する重要ポイント~
切削加工の現場では、「工具の刃先形状」によって加工効率や工具寿命が大きく変わることをご存じでしょうか?その理由は、刃先の形状が**切削抵抗(切るときにかかる力)**に大きく影響するからです。
今回は、代表的な刃先形状の種類と、それぞれが切削抵抗にどのように関係するかを解説します。
そもそも切削抵抗とは?
切削抵抗とは、工具が材料を削るときに発生する力です。具体的には以下の3方向に分けて考えることができます:
- 主分力(切削方向の力)
- 送り分力(送り方向=工具の進行方向の力)
- 背分力(工具が材料を押しつける方向の力)
この抵抗が大きいほど、工具や機械にかかる負担が増し、工具摩耗や仕上げ精度の低下を招きます。
刃先形状の違いと切削抵抗への影響
1.
すくい角(rake angle)
刃先が材料を「すくい上げる」角度のことで、最も基本的な形状要素です。
- 正すくい角(+):
切削抵抗が小さくなり、滑らかな切削が可能。ただし、刃が薄くなり折れやすい。 - 負すくい角(−):
刃先が強くなり耐久性アップ。ただし、抵抗が大きく切削力も上がる。
→ 軟らかい材料には正すくい角、硬い材料や断続切削には負すくい角が有効です。
2.
逃げ角(relief angle)
切削面と工具の干渉を防ぐための角度。
- 適切な逃げ角がないと、摩擦が増えて切削抵抗も増加し、工具摩耗も早くなります。
- 大きすぎると刃先の支持力が低下し、折損しやすくなります。
3.
チップブレーカ
切りくずを分断する溝や段差を持つ構造。
- チップブレーカの設計によって、切りくず処理が改善され、切削抵抗を抑えられる。
- 適切に機能すれば、切りくずの巻き付きや詰まりを防ぎ、工具寿命の延長にもつながる。
4.
刃先の丸み・ホーニング
刃先を少し丸めた加工。主に耐欠損性を高めるために使われます。
- シャープな刃先:切削抵抗は小さいが、欠けやすい。
- ホーニングあり:刃先が強くなり安定するが、切削抵抗は若干増加。
→ 精密加工や仕上げ切削にはシャープな刃先、荒加工にはホーニングされた刃先が適しています。
まとめ:刃先形状は「力のかかり方」に直結する
切削加工において刃先形状の選定は、切削抵抗、工具寿命、加工面の仕上がり精度に直結します。
刃先形状要素 | 影響 |
正すくい角 | 切削抵抗↓,切削強度↓ |
負すくい角 | 切削抵抗↑、切削強度↑ |
逃げ角 | 摩擦・摩擦の抵抗 |
チップブレーカ | 切りくず処理,切削抵抗↓ |
ホーニング | 耐欠損性↑,切削抵抗やや↑ |
適切な形状を選ぶことが、トラブルを未然に防ぎ、生産性向上にもつながります。