エンドミルでのステンレス鋼切削|被削性とその対策を徹底解説
カテゴリーblog

ステンレス鋼は優れた耐食性と強度を兼ね備え、食品機械、医療器具、航空部品など多岐にわたる分野で使用されています。しかし、エンドミルによる切削加工では「被削性が悪い材料」として知られ、工具摩耗や加工熱、仕上げ面の粗さといった課題が頻出します。本記事では、ステンレス鋼の被削性の特徴と、それに対する具体的な対策について解説します。
■ ステンレス鋼の被削性の課題
- 加工硬化性が高い
切削中に表面が急激に硬化し、工具への負担が増加します。 - 低い熱伝導率
発生した切削熱が工具側に集中しやすく、摩耗が早まります。 - 粘性が高い
切りくずが長く連続しやすく、切れ刃に溶着やビルドアップエッジが発生しやすいのが特徴です。
■ 対応策と工具選定ポイント
- コーティング付き超硬エンドミルの活用
TiAlNやAlCrNなどの耐熱・耐摩耗性に優れたコート付き工具が有効です。 - 工具形状の最適化
シャープな切れ刃形状やチップポケットが広めの設計が、切りくず排出性を改善します。 - クーラントの適切な使用
内部給油や高圧クーラントによる冷却・潤滑で、熱集中やビルドアップを抑制します。 - 適正な切削条件の設定
低速・高送りでの加工や、浅切込みでの多回切削が効果的です。
■ 加工の安定化に向けて
ステンレス鋼の切削では、被削性の問題が「工具寿命」と「仕上げ品質」に大きく影響します。素材特性に応じた工具の選定と、切削条件の最適化こそが安定加工へのカギとなります。実加工の観察やトライアルを通じたPDCAの継続も、非常に重要です。
■ まとめ
ステンレス鋼の被削性の難しさを克服するには、**「工具・条件・冷却」**の三位一体の見直しが求められます。エンドミルの選定一つで、寿命も仕上げも大きく変わる――それがステンレス鋼加工の奥深さです。