切くず処理とは?──機械加工現場に欠かせない“見えない主役”
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切削加工を行えば、必ず発生するのが**切くず(切りくず)**です。旋盤やフライス盤、ドリル加工など、金属を削る工程にはつきものの副産物ですが、この切くずの扱いは単なる「後片付け」では済まされません。
切くずの適切な処理は、作業の効率化・安全性の確保・設備保護・資源の再利用において重要な役割を果たしています。本記事では、切くず処理の基本から、種類別の対応、安全対策、リサイクルまでを解説します。
切くずとは?その発生と特徴
切くずとは、切削工具によって削り取られた被削材の一部です。形状・材質・加工条件により、以下のようにさまざまな形で現れます。
主な切くずの形状:
種類 | 特徴 | 主な加工条件 |
短い針状くず | 脆い材質・仕上げ切削 | 鋳鉄・真鍮など |
渦巻き状くず | 連続切削・適度な送り | 軟鋼・アルミなど |
細長いリボン状 | 高速・深切削・連続加工 | ステンレス・難削材など |
焦げくず | 熱・摩耗の影響 | 切削条件が不適切な場合 |
切くずが細長くなりすぎると、ワークや工具に絡まるリスクが高まり、加工不良や事故の原因になります。
切くず処理が重要な理由
切くずを適切に処理しないと、次のような問題が起こります:
- 工具・ワークへの巻き付き
- 作業者の怪我(手の切創・目の損傷など)
- 設備内部への詰まり・破損
- 冷却液や潤滑油の汚染
- 工場内の火災リスク(特にチタンやマグネシウム)
これらを防ぐためには、発生した切くずを早期に取り除き、分類・保管・処理するシステムが必要です。
現場での切くず処理方法
① 手動回収
- マグネットバーやトングを用いて取り除く
- 小規模・個別加工に適しているが作業者の負担が大きい
② チップコンベア(切くずコンベア)
- 加工機の下部に設置し、自動で切くずを搬出
- 連続加工・量産ラインに有効
③ 分離タンク(クーラントと切くずの分離)
- 切削油に混ざった切くずを沈降・フィルターなどで除去
- クーラント液の再利用と清浄化に貢献
切くずの安全管理ポイント
- 長尺くずには刃物のような鋭利さがあるため素手で触らない
- 防護メガネ・手袋の着用を徹底
- 火花や高温くずによる火災対策(消火器の常備)
- こまめな除去による滑り・転倒事故の防止
まとめ:切くず処理は「生産の一部」
切くずは「削りかす」ではなく、加工と安全の一環として管理すべき対象です。
作業の安全性、設備の寿命、加工の品質、そして資源の有効活用──すべてに直結するのが切くず処理の仕事です。
生産現場では「加工」と「切くず処理」はワンセットで考えるべき工程。
効率的かつ安全な加工を実現するために、切くずとの“付き合い方”を見直してみましょう。