その“くっつき”が命取り!?工具材料と溶着の深い関係
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切削加工において、「切れの悪さ」や「チッピングの発生」に悩まされることがあります。その原因のひとつが、工具と被削材の“親和性”による溶着現象です。特にアルミ合金やステンレス鋼など、柔らかく延性の高い材料を加工する際には注意が必要です。
本記事では、工具材料との親和性が引き起こす溶着のメカニズムと対策について解説します。
● 親和性とは何か?
親和性とは、異なる金属同士が化学的・物理的に結びつきやすい性質のこと。
工具と被削材の間で高温環境下においてこの性質が顕著になると、加工中に**溶着(溶着摩耗・切りくずの付着)**が発生します。
● 溶着が引き起こす問題点
- 切れ刃への被削材の付着
→ 刃先形状が変化し、切削抵抗やびびりの原因となる。 - 工具の早期損傷
→ 溶着とともに被削材がはがれ、工具表面の欠損(チッピング)が起こる。 - 加工精度の悪化
→ 溶着があると切削状態が不安定になり、寸法ばらつきや面粗さ悪化につながる。
● 親和性の高い組み合わせ例
- アルミニウム × 超硬工具(特にTi系コートなし)
- ステンレス鋼 × 一般的なハイス工具
- チタン合金 × コバルト系工具
これらは、温度上昇とともに化学的結合を起こしやすいため、適切な工具材とコーティングが必要です。
● 対策方法
- コーティングの活用:TiN、AlTiN、DLCなどで親和性を抑制。
- 低摩擦工具の選定:切削熱の上昇を防ぎ、密着を避ける。
- MQLや内冷クーラントの使用:潤滑効果で刃先への付着を防止。
- 切削条件の見直し:切削速度や送りの調整により発熱量をコントロール。
切削の現場では見えにくい「親和性」に注目することで、工具寿命の延伸と加工品質の安定化が実現します。被削材と工具の“相性”を理解し、適切な対策を講じることが求められます。