ステンレス鋼切削はノッチ摩耗に注意せよ

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ステンレス鋼は耐食性や靱性に優れ、医療・食品・化学など幅広い分野で使用されていますが、切削加工においては**「ノッチ摩耗」**という特有の損傷が起こりやすく、工具寿命や加工精度に大きな影響を与えます。

本記事では、ステンレス鋼切削におけるノッチ摩耗の原因と対策について解説します。

● ノッチ摩耗とは?

ノッチ摩耗とは、切込み深さ付近(DOCライン)に局所的に発生する摩耗で、刃先の肩部にえぐれのような損傷が生じる現象です。摩耗は進行すると工具の欠損やびびりを引き起こし、加工面に悪影響を及ぼします。

● ステンレス鋼でノッチ摩耗が起きやすい理由

  1. 加工硬化性が高い
     切削によって表面硬化が起きやすく、特に切込み部で硬い層が形成される。
  2. 切削熱がこもりやすい
     低熱伝導性により、熱が工具側に集中しやすく摩耗が加速する。
  3. 硫黄などの添加元素が少ない
     被削性改善元素が少ないため、摩擦が大きくなりやすい。

● ノッチ摩耗による悪影響

  • 工具チッピングや刃先欠損の誘発
  • 切削抵抗の急上昇と振動の発生
  • 仕上げ面の段差・波打ちなどの品質低下

● ノッチ摩耗の対策ポイント

  1. コーティング工具の活用
     耐熱性・耐摩耗性の高いAlTiNやTiSiNなどが有効。
  2. 断続切削の回避
     連続加工にすることで切込み部の熱集中を防止。
  3. 切削条件の最適化
     切込み深さを変化させて特定部位に熱・応力を集中させない。
  4. クーラントの適正使用
     高圧・内径給油によって切込み部の温度上昇を抑制。

ステンレス鋼の加工では、表面的には気づきにくいノッチ摩耗が大きな問題に発展することがあります。工具の摩耗位置に注目することで、トラブルの早期発見と生産性の維持が可能になります。

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