温度・時間・冷却法の手順
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【実務で使える熱処理の基本】温度・時間・冷却法の手順とは?金属を強くする3つの要素を解説!
金属部品の性能を引き出すうえで欠かせないのが「熱処理」。
熱処理は、ただ加熱して冷やすだけではなく、温度・保持時間・冷却方法をしっかり管理してはじめて、狙った強度や硬度、靭性が得られます。
この記事では、熱処理における「温度」「時間」「冷却法」の手順と意味をわかりやすく解説します。
熱処理の3要素とは?
熱処理では以下の3つが結果を左右する基本条件です。
要素 | 内容 | 加工への影響 |
温度 | 加熱する温度(処理温度) | 結晶構造が変化するかどうかを決める |
時間 | その温度に保つ時間(保持時間) | 組織変化の「完了度」を決定 |
冷却法 | 冷やす速度・方法 | 得られる結晶構造=性能を決定 |
【手順1】温度設定:目的の組織変化に応じた加熱
● 例:鉄鋼材料の場合
- 焼入れ → 約800~900℃(オーステナイト化温度)
- 焼なまし → 約600~750℃(再結晶・応力除去)
- 焼戻し → 約200~600℃(硬さと靭性の調整)
ポイント:
- 温度が足りないと組織が変化せず「処理失敗」になる
- 過熱しすぎると結晶が粗大化し、逆に性能低下
【手順2】時間管理:十分な保持で組織を安定させる
加熱したら、すぐに冷やしてはいけません。**その温度に一定時間保持(ホールド)**する必要があります。
● 例:中小部品の場合
- 保持時間:断面厚1cmあたり10~30分が目安
- 均熱処理(全体が均一に加熱される時間)を含める
ポイント:
- 時間が短いと中心部まで温度が届かず、処理ムラが出る
- 長すぎても酸化や粒成長の原因に
【手順3】冷却法の選択:性能を決める“最終工程”
冷却スピードによって、金属内部にできる結晶組織=性質そのものが決まるため、非常に重要です。
冷却法 | 方法 | 得られる組織・特徴 |
急冷 | 水・油・塩浴など | マルテンサイト(非常に硬い) |
空冷 | 自然放冷 | パーライト・フェライト(適度な硬さ) |
炉冷 | 炉の中で徐冷 | 柔らかく、加工しやすい組織 |
ポイント:
- 急冷は硬さ重視(焼入れ)、ただし脆さが増す
- 徐冷は応力除去・加工性重視(焼なまし)
【実際の処理例】焼入れ+焼戻しの基本手順(工具鋼の場合)
- 加熱(オーステナイト化):850〜880℃に加熱
- 保持時間:30分(ワーク厚みに応じて調整)
- 急冷:油冷または水冷で硬化
- 焼戻し:200〜550℃に再加熱し、1時間保持
- 空冷:常温まで冷却して完成
→ 硬さと粘り強さのバランスを両立!
まとめ:熱処理は「温度×時間×冷却法」の3拍子が命!
熱処理は「焼く→冷ます」だけではなく、
- 温度設定で組織を“変える”
- 時間管理で組織を“安定させる”
- 冷却方法で性質を“決定づける”
という、3つの工程の組み合わせによって最終性能が決まるのです。
このプロセスを正しく理解し、狙った性能に応じて調整できることが、材料設計・品質管理・生産効率の向上につながります。