切削速度を上げる前に知っておきたい!工具寿命と損傷の深い関係
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切削速度(Vc)は生産性を左右する主要なパラメータのひとつです。加工時間を短縮するために「できるだけ速く削りたい」と考えがちですが、工具寿命や損傷との関係を正しく理解しないと、逆にコストや品質の悪化を招くリスクがあります。
本記事では、切削速度と工具寿命・損傷との関係性をデータと実例を交えて解説します。
● 切削速度と工具寿命の関係
切削速度が上がると、被削材と工具との間の摩擦熱が増加し、工具温度が上昇します。この熱は工具に以下のような影響を与えます:
- 摩耗の加速:特にフランク摩耗やクレータ摩耗が急激に進行。
- コーティングの劣化:PVDコーティングが熱で剥離しやすくなる。
- 熱割れ・チッピング:温度変動による熱応力が刃先にダメージを与える。
● 工具寿命の代表的なモデル(テイラーの公式)
V × Tⁿ = C
(V: 切削速度、T: 工具寿命、n: 材質に依存する指数、C: 定数)
この式からもわかるように、切削速度が高くなると工具寿命Tは指数的に短くなる傾向があります。
● 適正な速度設定の重要性
「速く削る=高能率」ではありません。切削速度は、被削材の性質・工具材質・冷却方式などを考慮し、寿命とのバランスで最適化する必要があります。
- 難削材や加工硬化の強い材料には速度抑制を
- 高性能コーティングや耐熱工具材なら高速対応可能
- クーラントやMQLの有無も考慮して設定する
生産性と工具寿命はトレードオフの関係にありますが、適正な切削速度の設定こそが、長寿命・安定加工の鍵なのです。