切削油剤の機能と溶着現象の防止|工具寿命と加工品質を守る“潤滑と冷却”の力

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切削加工中に起こる「溶着現象」は、被削材の一部が工具表面に付着・凝着し、寸法不良や工具損傷を引き起こす厄介な問題です。特にステンレス鋼やアルミニウムなどの延性材では頻発します。こうしたトラブルを抑制するために不可欠なのが「切削油剤」です。

1. 切削油剤の基本的な機能

切削油剤は、単に工具と被削材を冷やすだけではありません。

その機能には、冷却・潤滑・洗浄・防錆の4つがあります。

冷却機能は、切削点の発熱を抑えることで、工具の摩耗や寸法変化を防ぎます。潤滑機能は摩擦を減らし、溶着を抑制する効果があります。また、切りくずや微細な粉じんを洗い流す洗浄作用や、加工後の部品や機械をサビから守る防錆性も重要です。

2. 溶着現象の原因と問題点

溶着は、切削中の高温・高圧条件下で発生します。切りくずが排出されずに工具表面に付着し、再凝着することで発生します。これにより、仕上げ面の粗さが悪化し、工具の寿命も短くなります。さらに、寸法精度の乱れやチッピングも誘発されるため、品質トラブルの原因になります。

3. 切削油剤の選定と使い分け

溶着を抑えるには、潤滑性の高い油剤を選ぶことが効果的です。

水溶性油剤は冷却力に優れ、一般的な鉄鋼・ステンレス加工に適します。一方で、深穴加工やねじ切り、難削材加工には、潤滑性能に優れる不水溶性油剤が好まれます。さらに、環境負荷を抑えたMQL(微量潤滑)も、高精度ラインでの活用が進んでいます。

4. 溶着現象を防ぐ加工上の工夫

溶着を未然に防ぐためには、切削油剤に加え、以下の工夫も有効です。

たとえば、DLCやTiAlNなどのコーティングが施された工具を使うことで、工具表面の溶着を抑えることができます。また、高圧クーラントを用いれば、切削点への油剤到達性が向上し、冷却・洗浄の両面で効果的です。工具の突出しを最小限に抑えてビビリを抑えることや、適切な切れ刃設計で切りくずの滞留を防ぐことも重要です。

■ まとめ

切削油剤は、冷却材としてだけでなく、加工現場の“守り手”として機能します。潤滑性・洗浄性・防錆性を備えた油剤を正しく選び、供給方法や加工条件と合わせて最適化することで、溶着現象を大幅に抑制し、高精度かつ安定した加工を実現することができます。

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