SUS系耐熱鋼とSUH系耐熱鋼の切削データ
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材料特性を踏まえた加工条件の最適化とは?
高温環境下で使用される耐熱鋼には、**汎用ステンレス鋼(SUS系)と、より高耐熱性に特化した耐熱鋼グレード(SUH系)**が存在します。両者は材質の成分・特性が異なるため、切削加工においても大きな違いが出ることに注意が必要です。
■ SUS系耐熱鋼(例:SUS304, SUS316)
SUS304やSUS316は、本来は耐食性を重視したオーステナイト系ステンレスですが、比較的中低温域(〜600℃)の環境で耐熱材としても使われます。
切削特性:
- 加工硬化が起きやすく、切削抵抗が高い
- 熱伝導率が低いため、刃先に熱が集中
- 溶着やビルドアップエッジが発生しやすい
- 中速以下で、冷却重視の切削条件が基本
加工対策:
- PVDコート超硬工具(TiAlN, AlCrNなど)
- 内部給油式工具+高圧クーラント
- 比較的浅い切込みで安定切削を優先
■ SUH系耐熱鋼(例:SUH310S, SUH321, SUH347)
SUH鋼種はJISにおいて明確に「耐熱鋼」と定義される材料で、高Cr・高Niを含むオーステナイト系が中心です。長時間の高温使用を前提とするため、高強度で加工硬化も顕著です。
切削特性:
- SUS系よりさらに硬質・加工硬化性が強い
- 工具摩耗が早く、摩耗・欠け・熱損傷に注意
- 切りくず排出が困難で、びびりも発生しやすい
加工対策:
- 耐摩耗性重視の超硬工具+高性能コート
- 切削速度はSUSより低く設定し、送りも控えめに
- 剛性の高い機械構成と安定したクランプが重要
■ まとめ
SUS系とSUH系は「ステンレス」でも別物と考えるべきです。
SUH系では高温強度が要求される一方、加工面では工具寿命・切削トラブル対策が重要な設計要素となります。材料特性を理解し、適切な切削データで安定加工を実現しましょう。