SUS304と異系種ステンレス鋼の切削データ

系統ごとに異なる加工特性と条件設定の考え方
ステンレス鋼と一口に言っても、その加工性には大きな差があります。中でも代表格である**SUS304(オーステナイト系)**と、**フェライト系・マルテンサイト系・二相系(デュプレックス)**などの異系種ステンレス鋼では、切削時の応答や最適条件が大きく異なります。
■ SUS304(オーステナイト系)の加工性
SUS304は最も汎用的なステンレス鋼であり、耐食性・成形性に優れる一方、加工硬化性が高く、切削では溶着・摩耗・熱集中が起こりやすいのが課題です。
加工時には切削速度を抑えめに設定し、PVDコート工具や内部給油式工具を用いることが推奨されます。
■ フェライト系(例:SUS430)の加工性
フェライト系ステンレス鋼は加工硬化が小さく、被削性が比較的良好です。
切りくずが割れやすく、送り速度や切削速度をSUS304より高めに設定できることが多く、バリ発生も抑えやすいのが特徴です。
■ マルテンサイト系(例:SUS410)の加工性
この系統は高硬度化が可能で、耐摩耗性に優れる反面、切削抵抗が高く工具への負担が大きいのが特徴です。
低速・低送りでの加工が基本となり、欠けに強い工具材質の選定が重要です。
■ 二相系ステンレス鋼(例:SUS329J4L)の加工性
二相系はオーステナイトとフェライトの組織を併せ持ち、強度・耐食性ともに高い高機能材です。
しかしその高強度ゆえ、切削時には非常に大きな負荷がかかるため、高剛性工具・強力なクランプ・クーラント制御が必須となります。
■ 加工戦略のまとめ
- SUS304:熱と溶着対策を重視。中~低速で冷却強化。
- SUS430(フェライト系):比較的容易。送り・速度ともやや高め。
- SUS410(マルテンサイト系):硬さに注意。刃先チッピングを防ぐ条件設定。
- SUS329J4L(二相系):高負荷加工に対応する工具と条件が必須。
まとめ
ステンレス鋼は同じ「SUS品番」でも、その系統ごとに加工条件は大きく異なります。材質特性を理解し、系統別の最適な切削条件と工具選定を行うことが、工具寿命と加工品質の向上につながります。