ステンレス鋼切削の工具寿命の特異|“普通の摩耗”では終わらない、その理由とは?

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はじめに

ステンレス鋼(SUS304・SUS316・SUS430など)の切削加工では、「工具が急激にダメになる」「寿命が読みにくい」といった声が多く聞かれます。これは、ステンレス鋼特有の物理・化学的性質に起因しています。本記事では、ステンレス鋼切削における工具寿命の特異性とそのメカニズムを詳しく解説します。

工具寿命の特異な摩耗モード

1. 

チッピング(微小欠け)

  • 刃先が加工硬化層に繰り返し当たることで、微細な欠けが連続的に発生
  • 特にドリルやバイトのコーナー部に集中しやすい

2. 

溶着摩耗(BUE)

  • 被削材が刃先に付着 → 繰り返し剥がれて刃先を損傷
  • 送り過多・冷却不良時に急激に進行

3. 

拡散摩耗

  • 高温状態で工具材の成分が材料に移動し、刃先が脆化
  • 特にコーティングが薄い工具やドライ加工時に顕著

対策と工夫

  • 工具コーティングを最適化(TiAlN、AlCrN、DLCなど)
  • 切削速度を抑え、送り量を安定化
  • 高圧・内径クーラントによる刃先冷却の徹底
  • 突き出しを短く・剛性を高める工具ホルダーの選定
  • 寿命管理を可視化(摩耗幅・切削音・推力の記録)

加工現場の実例

  • SUS304×TiAlNコートドリル
     → 摩耗よりもBUEによるチッピング主因。切削油を高粘度に変更し改善。
  • SUS316×内冷付きエンドミル
     → 摩耗が安定して進行し工具交換のタイミングが読みやすくなった。

まとめ

ステンレス鋼の切削では、「単なる摩耗ではない現象」が工具寿命を大きく左右します。従来の鋼材加工の延長では対処しきれないため、摩耗の進行メカニズムを見極め、対策を講じることが不可欠です。寿命の“見えない変化”を捉えることで、生産性と工具費の最適化を図りましょう。

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