ステンレス鋼と耐熱鋼の切りくず処理性とは?
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加工性を左右する“切りくずの出方”を見極める
ステンレス鋼や耐熱鋼は、いずれも高強度・高靱性・耐食性を備えた高機能材料ですが、切削加工において“切りくずの処理性”が大きな課題となる材種でもあります。適切な切りくず制御ができなければ、工具損傷・加工不良・生産性低下を引き起こすリスクが高まります。
■ ステンレス鋼の切りくず処理性の特徴
オーステナイト系ステンレス(例:SUS304, SUS316)に代表されるステンレス鋼は、次のような切りくず傾向を持ちます:
- 加工硬化が強く、切りくずが薄く延びる
- 切りくずが連続しやすく、巻き付き・絡まりが発生
- 刃先に溶着しやすく、チッピングや仕上がり不良の原因に
- 微細溝や深穴加工では切りくず排出トラブルが頻発
■ 耐熱鋼の切りくず処理性の特徴
耐熱鋼(例:SUH310S, SUH321, SUH347など)は、さらに高い強度・硬化傾向を示し、次のような傾向があります:
- 切りくずが強靭で切断されにくいため、長尺になりやすい
- 切れ味の低下により、押し切りのような切削が発生
- 工具温度が上昇し、切りくずが赤熱・溶着しやすい
- チップブレーカがあってもうまく分断できないケースが多い
■ 共通課題と対策
● 問題点:
- 溶着による刃先の摩耗促進
- 切りくず噛み込みによるびびり・寸法不良
- 自動化工程での排出不良・トラブル頻発
● 有効な対策:
- チップブレーカ付き工具の選定(深切込み+高送り)
- 内部給油式工具での強制切りくず排出
- 高圧クーラントによる熱抑制とブロー効果の併用
- 材種に合わせた専用形状の切れ刃・すくい角の見直し
■ まとめ
切削加工における安定性は、切りくずの処理性によって大きく左右されます。ステンレス鋼・耐熱鋼のように高延性・高強度を持つ材質では、切りくずが加工不良の元凶になることも珍しくありません。
工具選定・クーラント条件・切削パラメータを見直すことで、トラブルを未然に防ぎ、高能率・高精度加工の実現が可能になります。