焼入れ・焼もどし
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【金属を強くする熱処理】焼入れ・焼もどしとは?その仕組みと使い分けを解説!
金属、特に「鋼(はがね)」の強さや耐久性は、熱処理によって劇的に変化します。
その中でも基本かつ重要な処理が、「焼入れ」と「焼もどし」。
この2つはセットで行うことがほとんどで、硬さと粘り強さを両立するための技術です。
今回は、焼入れと焼もどしの基本、どう違うのか、どんな効果があるのかをわかりやすく解説します。
焼入れとは?
● 概要
鋼を高温(約800〜900℃)に加熱し、急冷(通常は水・油)して硬くする処理です。
● なぜ硬くなるの?
焼入れによって鋼の内部構造が「マルテンサイト」という非常に硬い組織に変化するからです。
● 特徴と効果
- 表面硬度が飛躍的に向上
- 耐摩耗性アップ(擦れに強くなる)
- 工具や刃物、ギアなどに最適
● 注意点
- 非常に硬くなる反面、脆く割れやすくなる
- 内部応力が溜まり、歪みやクラックの原因にも
焼もどしとは?
● 概要
焼入れ後の鋼を、200〜600℃程度に再加熱してから冷却する処理。
目的は、脆くなった鋼を「しなやかさのある強さ」に戻すこと。
● 何が起きている?
マルテンサイト中の内部応力が除去され、部分的に組織が変化し、靭性(ねばり強さ)が回復します。
● 特徴と効果
- 衝撃に強くなる
- 寸法の安定性が高くなる(歪みが減る)
- 適度な硬さと粘りのバランスを調整可能
焼入れ・焼もどしは“セット”で使う理由
焼入れで得られる「硬さ」は、非常に有効な性能ですが、そのままだと壊れやすい=危険です。
そのため、焼入れで硬くし、焼もどしで粘りを加えるというセット処理が一般的です。
● 例:SK材(工具鋼)の熱処理プロセス
- 加熱(焼入れ)→ 850℃
- 急冷(水または油)→ 硬化
- 再加熱(焼もどし)→ 約200~500℃
- 空冷 → 靭性と硬度のバランスが取れた状態に
まとめ:金属の「硬さ」と「しなやかさ」は熱処理で決まる!
焼入れと焼もどしは、鋼に**「硬さ」と「強靭さ」という相反する性質をバランス良く与える技術**です。
- 焼入れ → とにかく硬くする
- 焼もどし → 割れないように粘りを加える
この熱処理コンビを理解することで、目的に応じた最適な金属性能設計が可能になります。