析出硬化の手順
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【手順で学ぶ】析出硬化処理とは?金属を強くする3ステップ熱処理の流れ
「あとから強くなる金属」――そんな材料があることをご存知でしょうか?
その代表例が、「析出硬化(せきしゅつこうか)処理」と呼ばれる熱処理によって強度を引き出す方法です。
今回は、金属材料を“時間と温度で鍛える”析出硬化処理の手順とその仕組みをわかりやすく解説します。
そもそも析出硬化とは?
析出硬化とは、金属の中に微細な粒子(析出物)を人工的に作り、それによって硬さ・強さを高める処理です。
- 鋼、アルミ合金、ニッケル基合金などに用いられます
- 加熱 → 急冷 → 時効(再加熱)という3段階のプロセスで実施されます
【手順】析出硬化処理の3ステップ
STEP 1:
溶体化処理(solution treatment)
● 内容
材料を高温(例:Al合金で約500〜540℃)に加熱し、合金元素(Cu、Mg、Niなど)を母材中に固溶させます。
● 目的
- 均一な組成の状態にする
- 後の時効処理で析出が起きやすい下地を作る
● 注意点
- 温度が低すぎると固溶しきらず、析出が不十分に
- 高すぎると組織が粗大化して性能低下
STEP 2:
急冷(quenching)
● 内容
溶体化処理後、常温の水や空気で急速冷却します。
金属中に合金元素が固溶したまま“凍結”された状態になります。
● 目的
- 固溶状態を保ったまま、析出を防ぐ
- 次の時効処理で効率的な析出を促す準備
● 注意点
- 冷却が遅いと、加熱中に析出が始まり効果が落ちる
- 熱歪みやクラックに注意(大型部品は特に)
STEP 3:
時効処理(aging)
● 内容
急冷後の金属を一定温度(例:150~250℃)で再加熱・保持し、微細な析出物を形成させます。
● 方法
- 自然時効(常温で放置):数時間~数日
- 人工時効(加熱して促進):数十分~数時間
● 目的
- 微細な析出粒子がすべりを妨げ、硬さ・強度を向上
- 耐摩耗性・疲労強度も改善される
● 注意点
- 過時効になると析出物が粗大化し、逆に強度が低下
- 温度・時間の管理が性能を左右する
まとめ:析出硬化は「材料を育てる」処理
- ステップ①:溶かして(溶体化)
- ステップ②:止めて(急冷)
- ステップ③:育てて(時効)
この3段階の温度と時間をコントロールすることで、金属の中に強さのもとを生み出すことができるのが析出硬化処理の魅力です。
高強度化・軽量化・耐久性向上を求める部品には、非常に有効な技術です。