ステップフィード切削と加工硬化現象|高硬度材を安定加工するための理論と実践
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ステップフィード切削とは?
ステップフィード切削(Step Feed Cutting)とは、送り量を小刻みに変化させながら段階的に切削を進める加工法です。特に難削材や加工硬化を起こしやすい材料に対して効果的で、工具負荷を抑えながら安定した切りくず排出を実現できます。
加工硬化とは何か
加工中に被削材の表層が塑性変形し、局所的に硬化する現象を「加工硬化(ワークハードニング)」といいます。これにより
- 工具摩耗の加速
- 再切削時の切込み抵抗増大
- 表面粗さの悪化
などの問題が発生します。
ステップフィードが有効な理由
加工硬化層を避けつつ切削するために、ステップフィードではあえて加工面に「段差」を設けて切り込む手法をとります。これにより:
- 新たな母材に切り込む機会を増やす
→ 加工硬化層を削らず、未加工部を狙って切削する。 - 切削熱の分散
→ 一定深さでの加工を避け、熱集中による硬化を抑制。 - 工具寿命の延長
→ 特定部位への連続負荷を避け、均一摩耗に。
適用例と使用条件
適用材料:
- ステンレス鋼(SUS304など)
- チタン合金(Ti-6Al-4V)
- 耐熱合金(インコネル、ハステロイ)
使用条件例:
- 1ステップあたりの送り:0.1〜0.5mm
- ステップ数:2~4段
- 切削条件:低速・高剛性を意識した条件設定
- 工具:コーティングエンドミルやチップ付き工具が効果的
注意点と工夫
- ステップ高さが大きすぎると段差痕(ビビリ)が発生するため注意
- ステップの**位置と順序制御(CAM上のパス制御)**が必要
- 切りくずの排出性も考慮し、クーラント供給と排出方向を工夫
まとめ
ステップフィード切削は、加工硬化に強い加工戦略として注目されています。加工硬化を回避しながら高精度・長寿命な切削を実現するために、工具・条件・パス制御の三位一体での最適化が求められます。難削材加工の現場で、ぜひ一度取り入れてみてください。