軟らかい鉄・硬い鉄
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【鉄の性質を知ろう】軟らかい鉄と硬い鉄の違いとは?用途別に見る“鉄の使い分け”
私たちの身の回りにある「鉄」はすべて同じように見えますが、実はその中には**「軟らかい鉄」と「硬い鉄」**があることをご存知でしょうか?
用途に応じて鉄の硬さは意図的に変えられており、それによって加工のしやすさ・強さ・使い道が大きく異なります。
この記事では、鉄がどうして「軟らかくも」「硬くも」できるのか、その仕組みと代表的な例をわかりやすく解説します。
そもそも鉄の「硬さ」ってなに?
「硬い」「軟らかい」とは、変形しにくさやキズの付きにくさを意味します。
硬さが高いほど、削ったり曲げたりするのが難しくなりますが、その分耐摩耗性や耐久性がアップします。
一方、軟らかい鉄は加工しやすく、溶接や曲げ加工に向いているという特徴があります。
【軟らかい鉄】の特徴と代表例
● 特徴:
- 加工しやすく、変形に強い(靭性が高い)
- 溶接や曲げ加工が簡単
- 一般的には炭素量が少ない(低炭素鋼)
● 代表例:
SS400(一般構造用圧延鋼材)
- 建築材料、橋梁、鉄骨などに使われる
- 硬すぎないので、溶接や穴あけ加工に適している
● 他の例:
- 軟鋼線材(ワイヤー、フェンスなど)
- 鉄筋(鉄骨コンクリート補強材)
【硬い鉄】の特徴と代表例
● 特徴:
- 表面が硬く、すり減りにくい
- 衝撃に弱いこともある(硬すぎると割れやすくなる)
- 一般的には炭素量が多い(中~高炭素鋼)
または熱処理によって硬化している
● 代表例:
工具鋼(SK材、SKD材など)
- ドリル、刃物、金型などに使われる
- 焼入れ処理で非常に高い硬さが得られる
● 他の例:
- バネ鋼(反発力が必要な部品)
- 焼入れ鋼(機械のシャフト、ギア)
鉄の硬さを変える方法は?
鉄の「硬さ」は、化学成分(炭素量や合金元素)だけでなく、以下のような熱処理によっても変えられます:
- 焼入れ:急冷して硬くする
- 焼戻し:焼入れ後に適度な温度で加熱して靭性を戻す
- 焼なまし:軟らかくして加工しやすくする
こうした処理を使い分けることで、同じ鉄でもまったく異なる性質に設計できるのです。
まとめ:鉄は「使い道」に応じて“硬さ”を変える
鉄は、「硬さを自在にコントロールできる」という点で非常に優れた材料です。
- 建築や配管などには軟らかく加工しやすい鉄
- 工具や機械部品には硬くて摩耗に強い鉄
このように、目的に合わせて“鉄の性格”を作り込む=合金設計・熱処理設計が、ものづくりにおける鉄の本当の強みです。